夢の記憶

ごくたまに楽しかった学生の頃の夢を見ます。
すごくリアルで起きるまで夢だと気づかないときがあります。「あっ、夢だったのか」と。
それと同じようにあるとき目を開けたら、今まで生きてきた世界が夢だったなんてことが起こりはしないかとときどき想像するのです。


「25年前の自分に戻ったらどういう人生を送るか」という質問に柄にもなく小説形式で回答してみました。
http://q.hatena.ne.jp/1295696153


この回答では2つのことを念頭に置きました。一つは前の人生の記憶は夢のように曖昧な物と捉えたこと。夢のようにところどころ抜け落ちていたり、きっかけが無ければ思い出さなかったり。その方が毎回同じ過ちを繰り返すという話にもっていきやすいからです。ただし曖昧で漠然とした記憶でも人生に有利に働くことになります。例えばこの新商品は爆発的ヒットしそうな予感がするから発売先の株を買うとかできるわけです。


そしてもう一つ念頭に置いたのは時間移動では運命を変えられない世界観にすること。これはどういうことかと言うと、バック・トゥ・ザ・フューチャースター・トレックでは過去を変えることで未来がめちゃくちゃになるタイムスリップではなくて、ドラえもんのタイムスリップ感と言えば分かりやすいかもしれません。


ドラえもんの道具でのび太でも簡単に勝てるチャンバラ刀というのが出てくる話があります。のび太宮本武蔵と戦ってみたいと言ってタイムマシンで過去に行きますが、宮本武蔵を見つけることができず挙句の果てにチャンバラ刀を無くしてしまいます。その刀を拾ったのが宮本武蔵で以後無敵の剣豪になったというわけです。


この話で面白いのがタイムスリップも歴史の一部となっているということ。時間の因果律を変えるタイムスリップでも歴史の運命は変えられない。運命が時間の一次元上に存在しているような世界観です。それは人生をリプレイして変えようとするが本質的な部分では変えられず同じ頃に自殺する話にすることで表現しようとしました。タイムリープという神の力に対して、人間の知恵でどうにかできることの方が非現実的なような気がします。


続きの回答では、運命という神の力に対して挑戦しなくてはなりませんでしたが、目的のすり替えをして逃げました。男が望んていることはループからの脱出ではなくて、ループするが故の不幸からの脱出です。タイムリープも記憶を伴わなければ意味を持たないことに着目すれば、前世で記憶を消すというささやかな神への抵抗ができるというわけです。


でも不幸にならなければ自殺をしなくなり結果的にタイムループから脱出できるかと言えば答えはノーです。この男は前世の記憶を持たない一番最初にも自殺をしているはずだからです。ではこの男の運命はこれからどうなるかと言うと、何回か自殺を繰り返して記憶を消すという行為を繰り返すということになります。釈迦の手のひらからは逃れることはできないのでしょうかね。


回答した後でこんなことを考えました。もしもこの世界は死と夢が繋がっていても誰も否定できないんじゃないかって。人が死んだらその人の人生のある時点の夢で目を覚ます。そのときは記憶がほとんど消えて残るのは微かな夢の記憶だけ。それこそはたまに見るリアルな夢の正体なんて。
誰も死んだ後のことなんかわからないじゃない。